異世界からの俺様美形王子×現代の巻き込まれ平凡男子の、現代ラブコメ逆転移ファンタジー。 普通の高校生・坂宮太智の隣に引っ越してきた百谷三兄弟。 ある夜、大智は隣人がなぜか庭を光らせたり、異世界ゲームキャラな格好をしている姿を目撃する。 その日から大智は隣人が気になってしまい、 クラスで席も隣な同級生・百谷圭次郎ウォッチングにハマってしまう。 しかし、それが圭次郎にバレてしまった時、太智は取り返しのつかない仕打ちを受けてしまう――。 「坂宮太智、お前もこれから好奇の視線に晒されて、変人の烙印を押されるがいい」 「そんなことで結婚するなよぉぉっ!」 ※表紙絵 星埜いろ先生
Lihat lebih banyak◇◇◇「太智ー、ご飯食べよー」昼休み時間になり、クラスメートで幼馴染の友人である古角悠が俺の所へやって来る。俺よりやや小柄な、真面目を絵に描いたようなヤツ。 ワシャワシャ撫ででも形が崩れない、悠の形状記憶サラサラ頭髪が今日も艶を放っている。寝癖が付きやすい俺には羨ましい。俺の前にある席を借りて机をくっつけると、いつもにこやかで優しい性格の悠は、隣の常時不愛想人間の圭次郎を無視せずに声をかけた。「百谷君も一緒にどう?」実は転向初日から悠は声をかけ続けている。でも圭次郎からの答えは毎度同じで、「……遠慮する」と露骨に嫌そうな顔をして席を立ち、教室から出て行ってしまうのがパターン化していた。今までは、めげない悠がすごいなと感心しつつ、放っておけばいいのに……と俺は何も言わずにいた。でも間近で圭次郎ウォッチングをしたくて、俺は口を開いた。「そう言わずに、一緒にどうだ? まさかひとりで便所で飯するのが好みか?」「は? そんな訳がない――」「じゃあ兄ちゃん先生たちと一緒に食べないとイヤってことか? 実は案外とお兄ちゃん大好きっ子?」「あ、あり得ない! 分かった、そこまで言うなら一緒に食べてやろう。光栄に思え!」まともに俺から口を聞いたのはこれが初めて。やはり王子様キャラが体の芯まで染みついているようで偉そうだ。根っからの王子か……期待を裏切らないヤツ。ガンッ!自分の机を俺たちの机に強くぶつけながらひっつけると、圭次郎は不本意そうに通学カバンから弁当を取り出す。――イチゴ柄の袋……カワイイな。 うおっ、弁当箱ちっさ! ピンクでカワイイでやんの。ネコのファンシーキャラが何匹もいやがる。本人、どう見たってヒョウとかピューマとか、孤高の肉食ネコ科なんだが……。え、中身は……ああっ、これ幼児に大人気のこしあんまんマンのキャラ弁?! ギャップすげぇ!しかも圭次郎、恥ずかしがる気配一切なし。堂々と、これが王族の食事ですと信じて疑わないような態度。大物だコイツ……と内心俺は困惑する。悠も驚いて目を剥いていたが、俺と違ってこういうことを完全スルーできるような性格じゃない。キャラ弁と圭次郎を交互に見ながら、悠はおずおずと尋ねてきた。「え、えっと、百谷君の家に、小さいきょうだいがいるの?」「別に。家の中では俺が最年少だが?」「そう、なんだ。その
◇◇◇百谷三兄弟の秘密を知る前と後で、俺の世界は変わってしまった。つい昨日までは、一番後ろの窓側の席が圭次郎で、その隣が俺という配置にげんなりしていた。だって圭次郎のヤツ、ずーっと不機嫌そうな顔してるし、たまにこっちを睨んでくるし。声かけても無視か「……かまうな」だし。ツンデレは嫌いじゃないけど、ツンのみは胸にグサッとくる。あと悪態つかれたり嫌がらせされたりはないけど、漂ってくる妙な圧がすごい。息苦しくてたまらなかった。でも今日は違う。圭次郎を俺の隣にしてくれたありがとう! と神社の賽銭箱に貯めてあるお年玉を全額入れて、神様に感謝したいくらいだった。◇◇◇授業中、先生の話を聞き流しながら視界の横で圭次郎を見る。さっそく不思議発見。圭次郎のヤツ、授業ガン無視でうつむいて、机の上でピアノを弾くように指をパタパタしていやがる。極めつけは、「……汝……深淵の闇……我に従え――」あまりに小さい声で全部は聞き取れないけど、なんか中二病全開なこと言ってる。席が隣だからこそ分かる呟き。これが圭次郎の前の席だと、耳をすませば声は聞こえるかもしれない。でも、表情とか動作は見えないから、今の席がベストポジションだ!ああ、ワクワクする。圭次郎ウォッチング楽しい。どうも王子様コスをしていなくてもキャラになり切っているらしい。何かが降りてるな……動きは静かでも、声や表情に深みがある。これで劇でもやれば拍手喝采のスタンディングオベーション待ったなしだ。しかも、「……使えんな……もう一度探せ……所詮は下級の精霊か――」見えない何かに話しかけてる時もある。え、セリフの練習してんのかよ?きれいな顔に似合わない低い声出して、お前、王子キャラは王子キャラでも、魔界の王子様設定だったりするの? 妙に迫力あるし、板についてる……どれだけ練習してきたんだよ?! 上手いって、マジで。転校前の学校でもこんな感じで毎日ブツブツと練習してきたのかと思うと、スゲーなあと心から感心してしまう。衣装に袖を通せば身も心も完璧に王子そのもの。その格好でこの見事なまでのなり切りを披露する姿を想像したら、あまりのガチぶりに妙な感動を覚えてしまう。うわー、間近で迫真の寸劇を通して見てみたい!双眼鏡で覗くだけじゃあもう足りない。庭での夜練習の時に、近づいて覗いてみよう。圭次郎でこれなん
◇◇◇俺の予想通り、百谷三兄弟の登場で学校は大騒ぎになった。凛々しく大人な数学教諭の芦太郎さん。 柔らか物腰の優男な養護教諭の宗三郎さん。 天然クール系イケメン王子っぷりな圭次郎。学生や先生たちは分かるけれど、スマホで取られた画像が他校の生徒や保護者まで拡散されて、昼休みには学校の周りに人だかりができていた。でも不思議なことに、翌日からは平穏な学校に戻っていて、普通に過ごすことができた。まるで何もなかったかのような平穏。 百谷三兄弟はそれぞれの場所で、俺の高校にすんなりと馴染んだ。芸能人やモデル以上のイケメン三人なのに。 この溶け込みっぷりは異常だった。誰もキャーキャー騒がなくなるなんて、どんな魔法を使ったんだ? と首を傾げるばかりだった。まあ俺はすぐにこの日常を受け入れた。 圭次郎の座席は俺の隣で、全方位に塩対応の扱いづらい残念イケメンで面白くなかったけれど、数日したら慣れた。美人は三日で慣れるとはよく言ったもんだ。◇◇◇そして百谷三兄弟が隣に引っ越してきて、二週間ほど経った頃の夜。「ん? なんだ?」俺は自室で中間テストに向けて勉強している最中だった。 ふと窓の外が光った気がして目を向けてみると――ぼんやりとした青白い光が、隣の庭から零れていた。「おっ、バーベキューでもしてるのか? でも、アイツが家族団らんでバーベキューってガラか? 似合わねぇ」学校で同じクラスになった圭次郎を思い出し、俺は頬を引きつらせる。アイツは高校に行きたくなかったのか、転向初日からムスッとしたまま誰とも馴れ合わず、未だに孤独を貫いている。女の子相手でも愛想ゼロ。「用もないのに話しかけるな」と塩対応で、クラスの女子たちの心をへし折ってしまい、今では誰もが腫れ物扱いをして近づかない。そんなヤツが、兄弟で仲良くバーベキュー? ってか、今は夜の十時だ。こんな時間に住宅街でバーベキューは非常識だよな。じゃあ何やってんだ?さすがに気になって、俺は棚に置いてあった小さな双眼鏡を手にすると、隣の庭を見てみる。 覗きは良くないよなあとは思ったが、気になってしょうがないし、変なことしてたら困るから、ちょっと覗くぐらい良いよな? と自分を納得させた。木々の隙間を縫って隣の庭を覗いてみれば――百谷兄弟が三人揃っているのが見えた。三人とも来ている服が、分厚い生地
高三の五月という中途半端な時期だった。 それまでの俺は見た目通りの中肉中背平凡男子学生で、特に大きなトラブルもなく、若干悪ノリ気味で平和に生きてきた。だけど連休最終日の昼下がり、俺ん家の隣に非凡の固まりが引っ越してきた。◇◇◇「突然申し訳ありません。このたび隣に引っ越して参りました百谷芦太郎〈ももやあしたろう〉と申します」挨拶に来たのは、映画から抜け出てきたような美青年二人と美少年。 俺ん家の玄関が春のイケメン祭りになった。開口一番に深々と頭を下げたのは 艶やかな黒髪のオールバックの男性。 凛々しく端正な顔立ち。「よろしくお願いします」と耳障りのいい低い声。気のせいか背後にキラキラエフェクトが見えてきた。俺の隣で、母さんから「熟女キラーね」という呟きが聞こえてくる。 熟女だけじゃなく、ちっちゃい女の子からおばーちゃんまで喜ぶと思う。しかも俺が通う高校の数学教諭として赴任するらしかった。これだけでも明日から学校が騒がしくなる予感でいっぱいなのに、「初めまして、私は百谷宗三郎〈ももやそうざぶろう〉。兄の芦太郎と同じ高校に産休の養護教諭の代理で来ました。何かありましたら、いつでも頼って下さいね」眼鏡をかけたにこやかな兄ちゃんで、焦げ茶のウネウネ髪。 保健室の先生よりもホストのほうが似合いそうな、優男系イケメン。保健室が女子の溜まり場になる未来が見えてくる。こんな先生が二人も赴任するなんて、間違いなく学校がお祭りモードに突入するはず。そしてトドメは――。「……」「……こら、挨拶しなさい」「……百谷圭次郎〈ももやけいじろう〉だ」芦太郎さんに促されて、兄二人の後ろで隠れるように立っていたヤツがボソッと言った。鋭い目つきに不満そうに顔をしかめたままの、長い茶髪を後ろで束ねた少年。この短いやり取りだけで確信してしまった。まともに挨拶もできないコイツは厄介で嫌なヤツだと。手足は長いし、俺よりも背丈がある。めちゃくちゃ羨ましい。しかも兄二人のイケメンっぷりが霞むくらいの美人顔。鼻の高さやら彫りの深さやらが日本人離れしていて、モデルじゃないと言われたほうが嘘だと叫びたくなるレベルだ。絶対に学校来たら全学年がざわつく。女子だけじゃなく、男子も落ち着かなくなる。そんな確信をしていると、俺の腕を母ちゃんが肘でつついてくる。 このまま挨拶しな
高三の五月という中途半端な時期だった。 それまでの俺は見た目通りの中肉中背平凡男子学生で、特に大きなトラブルもなく、若干悪ノリ気味で平和に生きてきた。だけど連休最終日の昼下がり、俺ん家の隣に非凡の固まりが引っ越してきた。◇◇◇「突然申し訳ありません。このたび隣に引っ越して参りました百谷芦太郎〈ももやあしたろう〉と申します」挨拶に来たのは、映画から抜け出てきたような美青年二人と美少年。 俺ん家の玄関が春のイケメン祭りになった。開口一番に深々と頭を下げたのは 艶やかな黒髪のオールバックの男性。 凛々しく端正な顔立ち。「よろしくお願いします」と耳障りのいい低い声。気のせいか背後にキラキラエフェクトが見えてきた。俺の隣で、母さんから「熟女キラーね」という呟きが聞こえてくる。 熟女だけじゃなく、ちっちゃい女の子からおばーちゃんまで喜ぶと思う。しかも俺が通う高校の数学教諭として赴任するらしかった。これだけでも明日から学校が騒がしくなる予感でいっぱいなのに、「初めまして、私は百谷宗三郎〈ももやそうざぶろう〉。兄の芦太郎と同じ高校に産休の養護教諭の代理で来ました。何かありましたら、いつでも頼って下さいね」眼鏡をかけたにこやかな兄ちゃんで、焦げ茶のウネウネ髪。 保健室の先生よりもホストのほうが似合いそうな、優男系イケメン。保健室が女子の溜まり場になる未来が見えてくる。こんな先生が二人も赴任するなんて、間違いなく学校がお祭りモードに突入するはず。そしてトドメは――。「……」「……こら、挨拶しなさい」「……百谷圭次郎〈ももやけいじろう〉だ」芦太郎さんに促されて、兄二人の後ろで隠れるように立っていたヤツがボソッと言った。鋭い目つきに不満そうに顔をしかめたままの、長い茶髪を後ろで束ねた少年。この短いやり取りだけで確信してしまった。まともに挨拶もできないコイツは厄介で嫌なヤツだと。手足は長いし、俺よりも背丈がある。めちゃくちゃ羨ましい。しかも兄二人のイケメンっぷりが霞むくらいの美人顔。鼻の高さやら彫りの深さやらが日本人離れしていて、モデルじゃないと言われたほうが嘘だと叫びたくなるレベルだ。絶対に学校来たら全学年がざわつく。女子だけじゃなく、男子も落ち着かなくなる。そんな確信をしていると、俺の腕を母ちゃんが肘でつついてくる。 このまま挨拶しな...
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