寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~

寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~

last updateПоследнее обновление : 2025-04-23
От :  天岸あおいUpdated just now
Язык: Japanese
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異世界からの俺様美形王子×現代の巻き込まれ平凡男子の、現代ラブコメ逆転移ファンタジー。 ※話タイトル前の『●』はR18シーンあり。 普通の高校生・坂宮太智の隣に引っ越してきた百谷三兄弟。 ある夜、大智は隣人がなぜか庭を光らせたり、異世界ゲームキャラな格好をしている姿を目撃する。 その日から大智は隣人が気になってしまい、 クラスで席も隣な同級生・百谷圭次郎ウォッチングにハマってしまう。 しかし、それが圭次郎にバレてしまった時、太智は取り返しのつかない仕打ちを受けてしまう――。 「坂宮太智、お前もこれから好奇の視線に晒されて、変人の烙印を押されるがいい」 「そんなことで結婚するなよぉぉっ!」 ※表紙絵 星埜いろ先生

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隣に非凡の固まりが引っ越してきた

高三の五月という中途半端な時期だった。 それまでの俺は見た目通りの中肉中背平凡男子学生で、特に大きなトラブルもなく、若干悪ノリ気味で平和に生きてきた。だけど連休最終日の昼下がり、俺ん家の隣に非凡の固まりが引っ越してきた。◇◇◇「突然申し訳ありません。このたび隣に引っ越して参りました百谷芦太郎〈ももやあしたろう〉と申します」挨拶に来たのは、映画から抜け出てきたような美青年二人と美少年。 俺ん家の玄関が春のイケメン祭りになった。開口一番に深々と頭を下げたのは 艶やかな黒髪のオールバックの男性。 凛々しく端正な顔立ち。「よろしくお願いします」と耳障りのいい低い声。気のせいか背後にキラキラエフェクトが見えてきた。俺の隣で、母さんから「熟女キラーね」という呟きが聞こえてくる。 熟女だけじゃなく、ちっちゃい女の子からおばーちゃんまで喜ぶと思う。しかも俺が通う高校の数学教諭として赴任するらしかった。これだけでも明日から学校が騒がしくなる予感でいっぱいなのに、「初めまして、私は百谷宗三郎〈ももやそうざぶろう〉。兄の芦太郎と同じ高校に産休の養護教諭の代理で来ました。何かありましたら、いつでも頼って下さいね」眼鏡をかけたにこやかな兄ちゃんで、焦げ茶のウネウネ髪。 保健室の先生よりもホストのほうが似合いそうな、優男系イケメン。保健室が女子の溜まり場になる未来が見えてくる。こんな先生が二人も赴任するなんて、間違いなく学校がお祭りモードに突入するはず。そしてトドメは――。「……」「……こら、挨拶しなさい」「……百谷圭次郎〈ももやけいじろう〉だ」芦太郎さんに促されて、兄二人の後ろで隠れるように立っていたヤツがボソッと言った。鋭い目つきに不満そうに顔をしかめたままの、長い茶髪を後ろで束ねた少年。この短いやり取りだけで確信してしまった。まともに挨拶もできないコイツは厄介で嫌なヤツだと。手足は長いし、俺よりも背丈がある。めちゃくちゃ羨ましい。しかも兄二人のイケメンっぷりが霞むくらいの美人顔。鼻の高さやら彫りの深さやらが日本人離れしていて、モデルじゃないと言われたほうが嘘だと叫びたくなるレベルだ。絶対に学校来たら全学年がざわつく。女子だけじゃなく、男子も落ち着かなくなる。そんな確信をしていると、俺の腕を母ちゃんが肘でつついてくる。 このまま挨拶しな...

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隣に非凡の固まりが引っ越してきた
高三の五月という中途半端な時期だった。 それまでの俺は見た目通りの中肉中背平凡男子学生で、特に大きなトラブルもなく、若干悪ノリ気味で平和に生きてきた。だけど連休最終日の昼下がり、俺ん家の隣に非凡の固まりが引っ越してきた。◇◇◇「突然申し訳ありません。このたび隣に引っ越して参りました百谷芦太郎〈ももやあしたろう〉と申します」挨拶に来たのは、映画から抜け出てきたような美青年二人と美少年。 俺ん家の玄関が春のイケメン祭りになった。開口一番に深々と頭を下げたのは 艶やかな黒髪のオールバックの男性。 凛々しく端正な顔立ち。「よろしくお願いします」と耳障りのいい低い声。気のせいか背後にキラキラエフェクトが見えてきた。俺の隣で、母さんから「熟女キラーね」という呟きが聞こえてくる。 熟女だけじゃなく、ちっちゃい女の子からおばーちゃんまで喜ぶと思う。しかも俺が通う高校の数学教諭として赴任するらしかった。これだけでも明日から学校が騒がしくなる予感でいっぱいなのに、「初めまして、私は百谷宗三郎〈ももやそうざぶろう〉。兄の芦太郎と同じ高校に産休の養護教諭の代理で来ました。何かありましたら、いつでも頼って下さいね」眼鏡をかけたにこやかな兄ちゃんで、焦げ茶のウネウネ髪。 保健室の先生よりもホストのほうが似合いそうな、優男系イケメン。保健室が女子の溜まり場になる未来が見えてくる。こんな先生が二人も赴任するなんて、間違いなく学校がお祭りモードに突入するはず。そしてトドメは――。「……」「……こら、挨拶しなさい」「……百谷圭次郎〈ももやけいじろう〉だ」芦太郎さんに促されて、兄二人の後ろで隠れるように立っていたヤツがボソッと言った。鋭い目つきに不満そうに顔をしかめたままの、長い茶髪を後ろで束ねた少年。この短いやり取りだけで確信してしまった。まともに挨拶もできないコイツは厄介で嫌なヤツだと。手足は長いし、俺よりも背丈がある。めちゃくちゃ羨ましい。しかも兄二人のイケメンっぷりが霞むくらいの美人顔。鼻の高さやら彫りの深さやらが日本人離れしていて、モデルじゃないと言われたほうが嘘だと叫びたくなるレベルだ。絶対に学校来たら全学年がざわつく。女子だけじゃなく、男子も落ち着かなくなる。そんな確信をしていると、俺の腕を母ちゃんが肘でつついてくる。 このまま挨拶しな
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兄弟で全力コスプレごっこ?
◇◇◇俺の予想通り、百谷三兄弟の登場で学校は大騒ぎになった。凛々しく大人な数学教諭の芦太郎さん。 柔らか物腰の優男な養護教諭の宗三郎さん。 天然クール系イケメン王子っぷりな圭次郎。学生や先生たちは分かるけれど、スマホで取られた画像が他校の生徒や保護者まで拡散されて、昼休みには学校の周りに人だかりができていた。でも不思議なことに、翌日からは平穏な学校に戻っていて、普通に過ごすことができた。まるで何もなかったかのような平穏。 百谷三兄弟はそれぞれの場所で、俺の高校にすんなりと馴染んだ。芸能人やモデル以上のイケメン三人なのに。 この溶け込みっぷりは異常だった。誰もキャーキャー騒がなくなるなんて、どんな魔法を使ったんだ? と首を傾げるばかりだった。まあ俺はすぐにこの日常を受け入れた。 圭次郎の座席は俺の隣で、全方位に塩対応の扱いづらい残念イケメンで面白くなかったけれど、数日したら慣れた。美人は三日で慣れるとはよく言ったもんだ。◇◇◇そして百谷三兄弟が隣に引っ越してきて、二週間ほど経った頃の夜。「ん? なんだ?」俺は自室で中間テストに向けて勉強している最中だった。 ふと窓の外が光った気がして目を向けてみると――ぼんやりとした青白い光が、隣の庭から零れていた。「おっ、バーベキューでもしてるのか? でも、アイツが家族団らんでバーベキューってガラか? 似合わねぇ」学校で同じクラスになった圭次郎を思い出し、俺は頬を引きつらせる。アイツは高校に行きたくなかったのか、転向初日からムスッとしたまま誰とも馴れ合わず、未だに孤独を貫いている。女の子相手でも愛想ゼロ。「用もないのに話しかけるな」と塩対応で、クラスの女子たちの心をへし折ってしまい、今では誰もが腫れ物扱いをして近づかない。そんなヤツが、兄弟で仲良くバーベキュー? ってか、今は夜の十時だ。こんな時間に住宅街でバーベキューは非常識だよな。じゃあ何やってんだ?さすがに気になって、俺は棚に置いてあった小さな双眼鏡を手にすると、隣の庭を見てみる。 覗きは良くないよなあとは思ったが、気になってしょうがないし、変なことしてたら困るから、ちょっと覗くぐらい良いよな? と自分を納得させた。木々の隙間を縫って隣の庭を覗いてみれば――百谷兄弟が三人揃っているのが見えた。三人とも来ている服が、分厚い生地
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授業中でも練習熱心な圭次郎
◇◇◇百谷三兄弟の秘密を知る前と後で、俺の世界は変わってしまった。つい昨日までは、一番後ろの窓側の席が圭次郎で、その隣が俺という配置にげんなりしていた。だって圭次郎のヤツ、ずーっと不機嫌そうな顔してるし、たまにこっちを睨んでくるし。声かけても無視か「……かまうな」だし。ツンデレは嫌いじゃないけど、ツンのみは胸にグサッとくる。あと悪態つかれたり嫌がらせされたりはないけど、漂ってくる妙な圧がすごい。息苦しくてたまらなかった。でも今日は違う。圭次郎を俺の隣にしてくれたありがとう! と神社の賽銭箱に貯めてあるお年玉を全額入れて、神様に感謝したいくらいだった。◇◇◇授業中、先生の話を聞き流しながら視界の横で圭次郎を見る。さっそく不思議発見。圭次郎のヤツ、授業ガン無視でうつむいて、机の上でピアノを弾くように指をパタパタしていやがる。極めつけは、「……汝……深淵の闇……我に従え――」あまりに小さい声で全部は聞き取れないけど、なんか中二病全開なこと言ってる。席が隣だからこそ分かる呟き。これが圭次郎の前の席だと、耳をすませば声は聞こえるかもしれない。でも、表情とか動作は見えないから、今の席がベストポジションだ!ああ、ワクワクする。圭次郎ウォッチング楽しい。どうも王子様コスをしていなくてもキャラになり切っているらしい。何かが降りてるな……動きは静かでも、声や表情に深みがある。これで劇でもやれば拍手喝采のスタンディングオベーション待ったなしだ。しかも、「……使えんな……もう一度探せ……所詮は下級の精霊か――」見えない何かに話しかけてる時もある。え、セリフの練習してんのかよ?きれいな顔に似合わない低い声出して、お前、王子キャラは王子キャラでも、魔界の王子様設定だったりするの? 妙に迫力あるし、板についてる……どれだけ練習してきたんだよ?! 上手いって、マジで。転校前の学校でもこんな感じで毎日ブツブツと練習してきたのかと思うと、スゲーなあと心から感心してしまう。衣装に袖を通せば身も心も完璧に王子そのもの。その格好でこの見事なまでのなり切りを披露する姿を想像したら、あまりのガチぶりに妙な感動を覚えてしまう。うわー、間近で迫真の寸劇を通して見てみたい!双眼鏡で覗くだけじゃあもう足りない。庭での夜練習の時に、近づいて覗いてみよう。圭次郎でこれなん
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間近で観察も乙なもの
◇◇◇「太智ー、ご飯食べよー」昼休み時間になり、クラスメートで幼馴染の友人である古角悠〈こかどゆう〉が俺の所へやって来る。俺よりやや小柄な、真面目を絵に描いたようなヤツ。 ワシャワシャ撫ででも形が崩れない、悠の形状記憶サラサラ頭髪が今日も艶を放っている。寝癖が付きやすい俺には羨ましい。俺の前にある席を借りて机をくっつけると、いつもにこやかで優しい性格の悠は、隣の常時不愛想人間の圭次郎を無視せずに声をかけた。「百谷君も一緒にどう?」実は転向初日から悠は声をかけ続けている。でも圭次郎からの答えは毎度同じで、「……遠慮する」と露骨に嫌そうな顔をして席を立ち、教室から出て行ってしまうのがパターン化していた。今までは、めげない悠がすごいなと感心しつつ、放っておけばいいのに……と俺は何も言わずにいた。でも間近で圭次郎ウォッチングをしたくて、俺は口を開いた。「そう言わずに、一緒にどうだ? まさかひとりで便所で飯するのが好みか?」「は? そんな訳がない――」「じゃあ兄ちゃん先生たちと一緒に食べないとイヤってことか? 実は案外とお兄ちゃん大好きっ子?」「あ、あり得ない! 分かった、そこまで言うなら一緒に食べてやろう。光栄に思え!」まともに俺から口を聞いたのはこれが初めて。やはり王子様キャラが体の芯まで染みついているようで偉そうだ。根っからの王子か……期待を裏切らないヤツ。ガンッ!自分の机を俺たちの机に強くぶつけながらひっつけると、圭次郎は不本意そうに通学カバンから弁当を取り出す。――イチゴ柄の袋……カワイイな。 うおっ、弁当箱ちっさ! ピンクでカワイイでやんの。ネコのファンシーキャラが何匹もいやがる。本人、どう見たってヒョウとかピューマとか、孤高の肉食ネコ科なんだが……。え、中身は……ああっ、これ幼児に大人気のこしあんまんマンのキャラ弁?! ギャップすげぇ!しかも圭次郎、恥ずかしがる気配一切なし。堂々と、これが王族の食事ですと信じて疑わないような態度。大物だコイツ……と内心俺は困惑する。悠も驚いて目を剥いていたが、俺と違ってこういうことを完全スルーできるような性格じゃない。キャラ弁と圭次郎を交互に見ながら、悠はおずおずと尋ねてきた。「え、えっと、百谷君の家に、小さいきょうだいがいるの?」「別に。家の中では俺が最年少だが?」「そう、
last updateПоследнее обновление : 2025-04-03
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知れば知るほどファンタジー
◇◇◇一緒に昼メシを食べるようになってから、ほんの少しだけ圭次郎の態度が丸くなった。「よっ、おはよう圭次郎」今までは朝に家から出るタイミングが被って、無視するのも気分が悪くて挨拶しても、完全スルーされていた。でも今は、「……はよ」小声で聞こえにくいけど、ちゃんと挨拶してくれるようになった。しかもそれだけじゃない。圭次郎から俺の隣に並んで、そのまま学校まで行くようになった。なんて進歩だ!圭次郎からはほぼ話しかけず、無言に耐えかねて俺が話題を振ったら、ちょっとだけ話す程度。他のヤツな、こんな扱いづらいヤツと一緒にいるなんて苦痛でしかない。 けれど、コイツを観察することが今一番アツくて面白い俺にとっては、楽しみでしかなかった。◇◇◇学校でもブレない王子様キャラに、授業中の中二病全開の独り言。そして夜になれば何度も庭をぼんやりと光らせた中、百谷兄弟勢ぞろいで見事なコスプレをしながら寸劇の練習――朝から晩まで愉快なネタが尽きない。まさか平凡に生きてきた俺が、こんな刺激に満ちた日々に恵まれるなんて。 人生って面白い! なんて変にテンションが上がりすぎている自覚はある。ちょっと落ち着かないとなあ、とは思う。でも好奇心を百谷兄弟に煽られまくった自分を、止めることなんてできなかった。つい夜の庭に近づいて、庭を取り囲むように植えられた木の茂みに顔を突っ込み、百谷兄弟の寸劇に聞き耳を立てる。ストーカーになりつつあるよなあ……と自分にドン引きしながら、この一回だけ! と言い訳して聞いていたら、「なぜまだ見つからぬ?! ひとつの国をすべて探す訳でもないというのに!」苛立たしげに声を荒げる圭次郎に、芦太郎先生と宗三郎先生が跪いていた。 「申し訳ありません! こんなにも情報が得られないとは……誤算でした」悔しげに唸りながら、芦太郎先生が地面を叩く。 それに対して宗三郎先生はおとなしいけれど、長い溜め息から申し訳無さが溢れ出ていた。「小まめに校内と周辺を探索して、手は尽くしているのですが……」すごい……三人とも迫真の演技だ。 会話を途中から聞いているから、内容はよく分からない。でも緊迫した様子は伝わってきて、思わず俺は手の汗を握って聞き入ってしまう。そして、「まあ俺の精霊も見つけられずに嘆いているほどだからな。それだけアイツは厄介だ。これからも
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授業中の戦闘ごっこ
◇◇◇中間テストが終わって散々な結果でも、俺は気を張っていたらしい。母さんから次回のテストで点数が上がるまで小遣いカット宣言されて、それはもうガッカリした日の翌日――。「……え……今、何時……? はぁぁぁぁ?!」ささやかながらのテスト勉強に加えて、連日お隣さんのファンタジーコスプレ寸劇鑑賞をしていたせいで寝不足続き。疲労が積み重なっていたのは自覚してたけど……昼の十時かよ! 大遅刻確定じゃねーかっ!慌ててベッドから飛び起きて制服に着替えてリビングへ向かうと、テーブルの上に弁当とバナナ、そしてメモが置かれていた。『しっかり行って、怒られて来なさい 母より』うう……高校に入ってから、母さんに宣言されたことがある。 義務教育終わったんだし、自分のケツは自分で拭けるようになってね、という愛のムチ。だから高校生になった以降は、朝に起こしてくれなくなった。ガミガミ怒るタイプじゃないけれど、結構シビアな愛のムチは効きまくる。俺は急いでバナナを食べると、弁当をカバンに入れて家を飛び出した。どうにか三限目の終わりぐらいには滑り込めそうか? でも授業中に駆け込んで注目されたくないから、休み時間になるまで待ってたほうがいいか?考えながら走り続ければ、授業中で静まり切った学校へ到着する。 靴を履き替え、乱れた息を整えている最中――。「――くな……待て! ――……逃げるのだけは――」玄関からすぐにある階段あたりから、人の声と、強く踏み込んだり走ったりする足音が聞こえてくる。声は、たぶん圭次郎。 授業中なのに何やってんだ? まさか教室を抜け出して寸劇の練習?足を忍ばせて曲がり角まで移動し、俺は少しだけ顔を覗かせて様子を探る。てっきり圭次郎だけだと思っていたらそうじゃなくて、思わず俺の目が点になった。階段の下に立ち、圭次郎は険しい顔で見上げていた。 その視線を追っていくと――階段の踊り場に立つ、全身黒タイツの男。顔まで黒いマスクで覆い尽くしてやがる。
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お前らの世界に俺を巻き込まないで
「お前! ど、どうしてここに!?」目を見開いて心底驚く圭次郎へ、俺は笑って誤魔化してみる。「あ、いや、ちょっと寝過ごして遅刻したら、戦闘ごっこしてたから、つい見入って―」「はぁ? 戦闘ごっこ、だと……チッ、見えないっていうのは厄介だな」苛立たしげに舌打ちをしたと思ったら、圭次郎は俺の手を掴んで走り出した。「な、なんだよ、急に!」「いいから来い! 全力で走れ!」圭次郎の勢いに呑まれて、俺は言われるままに走る。黒尽くめの男が追おうとした瞬間、圭次郎はソイツに手の平を向けて口早に呟く。「火と水の精霊よ、互いに交わりて我に身を捧げよ……もっとだ……よし、続けろ」呪文っぽいものを圭次郎が言い出した途端、男の足が止まり、呻きながらその場でバタバタと腕を振り出す。まるで煙にやられて悶絶しているような……迫真の演技だ。あまりの名演っぷりに、見えないはずの煙が見えてしまいそうだ。思わず俺は感嘆の息をついた。「スゲー演技力……演劇の養成所とか通ってそう」「呑気なことを言うな! いくらこちら側の住人でも、直撃を食らえば無事では済まないからな!」未だに緊張感が途絶えていない圭次郎が、俺の呟きを聞いて睨みつけてくる。いつも誰に対しても興味なしで冷たい顔しているヤツとは思えない顔だな。こんなに必死の形相を俺に向けてくれるなんて新鮮だ。圭次郎には悪いけれどワクワクしてしまう。でも俺、劇とか苦手なんだよなあ。国語の朗読とか棒読みしかできないし……。悪い、圭次郎。俺はお前の世界には入れないから。だから俺を巻き込もうとしないでくれ。俺は走るのをやめて、圭次郎を引き止めた。「お前の邪魔して悪かった。俺、あっちの西階段使って教室行くから……今日のこと、誰にも言わ
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やってくれたな、巻き込み婚
「確かにくだらないことしてたけど、邪魔はしたくないんだ。本当に。とにかく、俺はお前のハマりっぷりを鑑賞していただけだし!」「ほう……「見てたのは謝るから、俺を巻き込まないでくれ。俺はそんな風に役作って成り切れるような人間じゃないから! 演技力ゼロの下手くそを取り込んで、お前たちの世界観をブチ壊さないでくれ!」「……風の精霊、コイツの本音をぶちまけてくれ」「このまま誰かに見られて、俺まで変人扱いされたくない――っ! ……ハッ、口が勝手に……?!」うっかり言うまいとしていた本音が口から出てしまい、俺の全身から血の気が引く。ゴメン圭次郎。俺、お前のガチ寸劇は好きだけど、変人認定は嫌だ。 下手したら友だちなくしたり、問題児扱いされて大学受験にも影響出そうだし。怒りでしかめっ面になっていた圭次郎の顔が、急に不穏な笑みを浮かべた。 目が据わっていて、今にも何か仕掛けてきそうなヤバさを感じずにはいられなかった。「坂宮太智……お前の本音、しかと聞いたぞ。ここまで俺を不愉快にさせる存在がいるとはな……許せん」うわぁぁ、本気で怒ってやがる……そうだよな、誰だって変人扱いされたら怒るもんな。でも朝から晩まで徹底して王子様キャラになり切って、授業中まで戦闘ごっこしてたらそう思っちゃうだろ! 俺は悪くない。うっかり目撃してるのがバレただけの被害者だ。もう気まずくなるの覚悟で、突き飛ばして圭次郎から逃げるしかない――俺が腹を括りかけたその時。「すべての精霊に告ぐ……今この瞬間の証人となり、婚華の祝福を我らが手に宿したまえ」いきなり圭次郎が左手を上げて呟くと、その手に一瞬閃光が走る。 そして掴んでいる俺の手を強引に持ち上げ、薬指に何かを捻じ込んできた。その手は左――指の付け根に金色の指輪が輝く。 合わせたように、圭次郎の左手薬指にも同じ指輪がはまっていた。「さあ、これでお前も俺と同じ側の人間になった」「ど、どういう意味?」「後ろを見れば分かる」言われるままに俺は振り返る。今まで何もなかったハズなのに、辺り一面に広がる白煙。フワフワと浮かぶ、色とりどりに淡い輝きを放つ野球ボールほどの光球。圭次郎から伸びていている、火で編まれた鎖。 それは煙の中でぎこちなく動こうとしている、極彩色な洋風の甲冑を着た男を縛り付けていた。まさかこれ、圭次郎が今まで見
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……花嫁……俺が……? ま、待て待て待て! 俺の同意なしで結婚しちゃったのかよ!?あまりに現実離れした状況に、固まっていた俺の頭がゆっくりと動き出す。口元やら頬やらを引きつらせながら、俺は圭次郎に顔を戻す。 言いたいことが山ほどあり過ぎて、どれからぶつけるかを選べず、唇が戦慄いて言葉がすぐに出てこなかった。「どうした? 嬉しさのあまり言葉を失ったか」「ち、違……っ! 結婚ってお前……っ、俺に、これを見せたいがために結婚したのかよ?!」「ああ、そうだ。変人として見られるなど、堪え難き不名誉。だが変人の汚名を晴らすために、大人しく振る舞う訳にもいかんからな」我が選択に一片の悔い無し、と言いたげに圭次郎が胸を張る。 コイツ、自分の間違いを絶対に認めないタイプだ。面倒くさい上に、吹っ切れると容赦なし。色々ヤバいヤツに関わってしまったと、激しい後悔が俺を頭をよぎる。だけど、もう引き返せなかった。「坂宮太智、お前もこれから俺とともに好奇の視線に晒されて、変人の烙印を押されるがいい」「そんなことで結婚するなよぉぉっ!」「ちなみに離縁は不可だ。どちらかが死ぬまで解消されることはない」「お前、実はアホだろ! 本物の王子様のクセに、取り返しのつかないことするなよぉ……」怒りを通り越し、俺はあり得ない現実に打ちひしがれる。ホント……どうすんだよ。 俺ら男同士なんだぞ? しかもそんなに仲良くない。家も席も隣だから、他のヤツらに比べたら良いほうかもしれないけれど――お互いのことさっぱり知らないんだぞ? マジで住む世界が違うんだぞ? 巻き込み目的で迂闊に結婚なんかするなよ!涙目になってきた俺に構わず、圭次郎は手首から伸びる火の鎖を掴み、捕らえた男を引っ張る。未だ甲冑男は鎖から逃れることを諦めていないようで、必死に身動いでいた。「詳しい話は後だ。まずはコイツをどうにかすることが先決だ」「ぅぅ……ソイツ、なんなんだよ……?」「今回俺たちが
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何も見えないほうが良かった?
廊下の突き当りを左に曲がり、体育館へ続く廊下の中ほどに保健室はあった。ガラッ、と勢いよくドアを開けると、椅子に座って書類を書いていた宗三郎先生が、驚いて肩を大きく跳ねさせた。「ど、どうしたの? えっと、お隣の太智君だよね? そんなに慌てて、ケガ人でも出ちゃった――」「一緒に来て下さい! 早くしないと圭次郎が甲冑男を燃やしかねないので!」唐突な登場に、突拍子もない話。事情を知らない宗三郎先生は、眼鏡の下でしきりにまぶたを瞬かせる。少しでも状況を汲み取ってもらいたくて、俺は左手の薬指に嵌められた指輪を見せながら告げた。「俺、圭次郎と結婚させられて、色々見えるようになっちゃったんです。早く来て下さい、ソーアさん!」「……えええええええっ! あ、わ、分か、りました、行きましょう!」宗三郎先生――ソーアさんはペンを放り投げ、慌てて立ち上がってこちらへ駆けてくる。着ている白衣の裾がひらめいたと思ったら――すぅ、と衣服が神官っぽいものへ変わる。途端に圭次郎の周囲に浮かんでいたような光球が、ソーアさんの周りにも浮かび出す。各々に廊下へ駆け出した際、すぐにソーアさんは俺の隣に並んだ。「太智君、殿下は今どちらに?」「正面玄関の近くで、ハデな甲冑きた男と戦ってます。火の鎖で縛り上げて、今にもジュッと全焼させそうな勢いです!」「殿下ならやりかねませんね……でも殿下がすでにそこまで追い詰めていらっしゃるなら、私は後始末のみで済みそうですね」ため息をつきながらのソーアさんの呟きに、俺は思わずギョッとなる。「後始末って、まさか、こんがり仕上がった焼死体を片付ける……」「ああっ、安心して下さい! 世界が違うもので攻撃しても効きは弱いのです。パッと見は派手かもしれませんが、精霊の炎で燃やされても死ぬことはありません。体力が激しく消耗して二、三日寝込むほどで済むかと……」「死なないなら良かったぁ……でも、何日も寝込むほどのダメージって……死ぬよりマシだけど」俺が不運な操られ男に同情していると、ソーアさ
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